【中和地区3市1町障害者自立支援協議会 令和6年度全体会】
2025年2月21日13:00~16:30。
令和6年度中和地区3市1町障害者自立支援協議会全体会が開催されました。
会場は大和高田市にある奈良県産業会館の5階大会議室です。

参加者は大和高田市、香芝市、葛城市、広陵町の関係機関の方々で、以前、視察させていただいた鳴門市地域自立支援協議会の方々も、リモートで参加してくださいました。
全体会の次第は以下のとおりです。
1. 挨拶
2. 報告
・鳴門市協議会の報告
・当事者からの報告
生活支援センターブリッジの利用者
就労継続支援B型事業所あっぷるの山下理事長(鳴門市)
休憩
3. グループワーク
・進行 関西福祉科学大学 山田裕一先生
4. 閉会挨拶
開会のあいさつ
まずは、香芝市社会福祉課長と協議会会長のあいさつから始まりました。
鳴門市協議会の報告
続いて、リモートで鳴門市協議会の方々から、どのような活動をされているか報告をしていただきました。

資料
(鳴門市)就労支援部会活動報告
(鳴門市)子ども支援部会活動報告
(鳴門市)地域移行部会説明
(鳴門市)基幹活動報告
鳴門市では、全体会などの他、4つの専門部会があり、市が主導するのではなく部会・事業所が主体的に活動されています。
就労移行支援では、利用3年目の延長をしない地域も多いです。
そんな中、鳴門市では当事者ごとにコア会議を開き、個別の事情に合わせて延長に繋げているそうです。
企業を訪問しての模擬面接も積極的に行っています。
企業の方々からアドバイスを頂いたり、当事者は学ぶことが多いそうです。
また、支援者もなかなか企業への訪問が難しい面もあり、いい機会となっています。
企業にとっても、当事者と直接対話するのは受け入れ側としてのメリットがあるそうです。
鳴門市の基幹相談支援センターでは、部会のフォローをしながら、個別の相談に年間3,500件弱も対応しているとのことです。
鳴門市がよりよい地域になるようにという想いを感じました。
当事者からの報告(ブリッジの利用者)
続いて、当事者からの報告です。
生活支援センター・ブリッジの利用者の方から、これまでの経験を踏まえたメッセージを語っていただきました。

まず、NPO法人ならチャレンジドにて、イベント(ひまわり活動)で受付・司会などをした経験を語られました。
中学は西和養護学校で、高校は高等養護学校に進学されました。
楽しかった思い出として、一年生の担任の先生のだじゃれが面白かったと語ったところ、その先生が全体会の参加者としておられました。
急遽、先生からも愛情のあるメッセージをいただき、会場が温かい雰囲気に包まれます。
部活は音楽部(コーラス)、バトミントン部に所属していて、充実した学校生活を送っておられました。
働くことを意識しだしたのは高校2年の夏休み頃。
就職に向けて、まずは実習として地域のドラッグストアで品出し・賞味期限のチェック・陳列などの仕事をされました。
また、別のところで、野菜作りや郵便物の仕分けなどの仕事も体験しました。
そして、地域のドラッグストアに就職し、品出し・陳列・賞味期限のチェックなどの業務をされています。
常連さんと仲良くなるなど、仕事を通じたコミュニケーションも取られているそうです。
勤務が10年も続いており、支援者の方が喜んでおられました。
将来的には福祉関係の仕事に就きたいそうで、未来を見据えておられるのが印象的でした。
最後に、支援者の方が、各ライフステージにおける様々な関わりや経験を通して、今に繋がっているのだろうと語られました。
今回のように当事者のこれまでをまとめて語っていただくことで、ライフステージごとの関りがよく分かっていいなと思いました。
当事者からの報告(あっぷるの山下理事長)
鳴門市からは、就労継続支援B型事業所あっぷるの山下理事長から事業内容などについて語っていただきました。

あっぷるでは、前身の作業所の頃からお弁当作りをされているそうです。
お弁当には、メンバー(利用者)の方が日替わりでメッセージを書いた帯を巻くという、ユニークな取り組みをされています。
日々のことなどが書かれたメッセージには、お客様からの返信もあり、いいコミュニケーションになっているようです。
他にも、「街の中の喫茶店あっぷる」「Apple Sweets工房」「あんこ屋本舗 あっぷる餡製作所」などの経営もされています。
商店街の中にある喫茶店あっぷるでは、メンバーの方が活き活きと働いておられます。
Apple Sweets工房はロールケーキがおすすめのスイーツ店です。
あんこ屋本舗は、利用者が家族のためにあんこのお菓子を作ったのがきっかけで、お店を作ってしまったそうです。
様々な店舗を立ち上げていくバイタリティがすごいなと思いました。
あんこ屋本舗ではぜんざいが500円なのですが、お客さんが「疲れた」と言えば、450円に値引きするという、ユニークなサービスをしておられます。
「疲れた」と言わせたいメンバー、わざと「疲れた疲れた」というお客さんなど、面白いコミュニケーションが生まれているようです。
事業所・店舗の様子は、Instagram の公式アカウントからもよく伝わってきます。
事業所内部は、入口から奥まで見えるレイアウトになっていて、メンバーが働いているところを見てもらえるようになっています。
実際に、お客さんたちとのいい触れ合いに結び付いているそうです。
・心の中で日々抱えているものを、仕事で忙しい中で外在化する。
・障害者が生きる上での社会との関わり、社会性の課題。
・障害を他人事ではなく自分事として捉える。
そういった問題意識を、山下理事長は持っておられました。
グループワーク
休憩を挟み、グループワークが始まりました。
まずは、障害児者相談支援専門員もされていた、関西福祉科学大学の山田裕一先生から、今回行うケア・カフェのご紹介がありました。

従来の講演会では、講師が情報を握っている、記憶に残りにくい、質問がしづらい、などの問題点がありました。
ケア・カフェは、カフェでのおしゃべりのような参加者同士の会話から、生きた意見交換や新しい発想が生まれることを期待します。
会話で大切にすることの説明がありました。
・相手を否定しない。傾聴し、関心を持ち、リスペクトする。
・思い切って(思いつきを)口に出す。
(ただし、守秘義務に関わることは、会が終われば口外しない)
・名前を口に出し、発表してくれた人には必ず「拍手」
(入場時に、名前が分かるよう名札が配られています)
・まずは自己紹介をする。
具体的には、3~5名ずつテーブルに分かれ、ひとつのテーマについて語り合います。
テーブルには大きな模造紙と緑・黄・赤の付箋が用意されていて、一人ひとりが、会話の中で出てきた事柄を付箋に書き込み、模造紙に貼っていきます。
そうすることで、視覚的に問題を把握することができます。
この会話をメンバーを入れ替えながら3回行います。
新しいグループで話題を引き継いで深めても、新しい話題を広げるのも自由です。
どのテーブルに移動するかは、入場した際に配られる名札に書かれてあるので、会はスムーズに進行しました。
(準備するのが大変だったかと思います)
山田裕一先生の軽妙な説明の後、グループワークが始まります。
今回のテーマは「意思決定支援」。
当事者の意思決定をどう支援するか。
支援員の方々には、身近な課題なはずです。


まずは拍手で始まりました。
1回目では、緑色の付箋を使います。
それぞれのテーブルで、自己紹介をきっかけに会話が盛り上がっていきます。
身振り手振りで話をする人もいれば、まだ少し緊張の残っている人も。
会話の中で生まれた言葉を付箋に書き、模造紙に貼っていました。
1人の話を他の方々がうなずきながら聞き、その話を受けて別の方が話を始める。
そういった会話がそこかしこで見られました。
【実際にグループワークに参加した他スタッフの感想】1回目
所属機関関係なく、まず意思決定支援の話をする中で「理想と現実」を口にする支援者が多かったです。利用者さん本人の望む生活、仕事、生き方、それが本当に本人にとって良いのか?実現できるものなのか?支援者としては全力で支援したい思いはあるが・・・と途中で言葉に詰まる思いも、深く共感できるものでした。また、利用者さんの思いの引き出し方や信頼関係構築までの道のりなど、各事業所が工夫している内容が聞け、それを付箋で共有することで大きな気づきになりました。
15分後、1回目のグループワークが終わります。
大きな拍手が起こりました。
盛り上がってきたところかもしれませんが、話を終えて席替えをします。
2回目は黄色の付箋を使います。
それぞれのテーブルには、移動をしないテーブルホストが1人います。
2回目のグループワークが始まると、まずはその方から、1回目にあった会話の説明があります。
その後、会話が広がっていきます。
テーブルごとに進み方が違っていて、話し込むのがメインのところもあれば、次々に付箋に書き出していくところもありました。
当然、どれがいいという訳ではなく、ただ違いが出ているのが面白かったです。
2回目の方がじっくりと話し込んでいるような気がしました。
話をする方も聞く方も、それぞれが積極的に会話に参加しています。
女性ばかりのテーブルでは、大いに話が盛り上がっていました。
年代の大きく違う方たちが集まるテーブルで、大きな笑い声が起きていたのがいいなと思いました。
【実際にグループワークに参加した他スタッフの感想】2回目
今回のテーブルは管理者や理事の方が多くおられました。一緒に法人を立ち上げた頃、利用者さんが3人しかいなかったので、なんでも親身に相談に乗れた、話ができた。しかし法人が大きくなり利用者さんの人数が増えると今まで出来ていたことができなくなった。初期からいる利用者さんから思いをぶつけられ、自身の支援は間違っていたのではと思い、その後支援を見直した。命の危険や緊急のこと以外は、本人の意思を尊重した返答を行っているという話を聞き、何十年福祉に携わってきても、支援に正解はなくいつでも悩みながら利用者さんのことを考える姿勢に考えさせられました。
また、現在の障害者の就職に関して、企業への就職以外は就労を認められずフリーランスや個人事業主になりたい本人と支援者の葛藤についても大きく盛り上がり、障害のある方の就労にももう少し幅ができればいいが世の中の流れよりも少し遅れているのが実情だよね。と結論づけられました。
15分後、2回目のグループワークが終わります。
席替えをし、3回目が始まりました。
3回目では、さらに話を深めつつ、最後のまとめをしていきます。
付箋は赤色です。
3回目になると、多くの方がリラックスした様子です。
新しく同じグループになった方の話を熱心に聞いたり、これまでの付箋を振り返ったりしていました。
そして、模造紙に貼られる付箋も増えていきます。
さすがに、3回続くと疲れが出てきたようにも見えました。
15分×3回というのはちょうどいい時間なのかもしれません。
【実際にグループワークに参加した他スタッフの感想】3回目
3回目になると模造紙にも付箋がたくさん貼ってあり、所属機関それぞれのエピソードも書いてあり面白かったです。私のグループでは本人の思いがどこまで本当なのか?理想と現実の大変さについての話を深掘りしました。障害特性なのか、意見がコロコロ変わる利用者の本心や、児童支援だと親と本人の思いの違い、支援者の見立てと親の意見の違いなど、本人を支援したい思いは同じでも立場や視点によっての違いをすり合わせることの大変さなども伺えました。3回のグループワークを通して感じたのは、所属は違えど、障害福祉に携わっている以上、本人を支援したいあつい思いは同じで、それは都道府県どこでも同じなんだなと感じました。
3回目のグループワークも無事に終わりました。
最後に1組だけ、そのテーブルのまとめを発表していただきました。
違う立場の方たちと話していても、問題意識には一本の繋がりがあると感じたそうです。
答えがなかなか出ないところが共通した悩みとのことでした。
山田裕一先生はケア・カフェを広めていきたいとお考えですので、興味を持たれた方は山田裕一先生にお問い合わせください。
有意義なコミュニケーションが生まれるだろうなと、今回のグループワークを拝見していて思いました。


閉会のあいさつ
最後に、副会長からのあいさつがあり、閉会となりました。
参加された方はお疲れさまでした。
また、リモートで参加していただいた鳴門市の方々、グループワークのケア・カフェをご紹介・進行していただいた山田裕一先生、お忙しいところありがとうございました。
レポート: ACADEMIA大和高田 鳥取


